様々なスポーツの話題に沸いた2022年夏。ゴルフでは埼玉出身の岩井千怜選手が史上3人目、プロ初優勝から2戦連続でのツアー優勝を果たしましたね。
さいたまスポーツアリーナや埼玉スタジアム2002などの国際大会で使用できる施設があるなど、スポーツの盛んな埼玉県ですが、8月に『大宮スーパー・ボールパーク構想』なるものが埼玉県から今夏発表されました。
今回はこちらについてご紹介したいと思います。
大宮スーパー・ボールパーク構想
この構想は『大宮公園の歴史的価値や日本的風景を継承するため、次の100年先を見据えた公園整備の基本的な考え』である『大宮公園グランドデザイン』の一環として、『試合がある日もない日も楽しめる公園』というコンセプトのもと、2019年から推し進められてきました。また、現埼玉県知事である大野元裕の選挙公約の一つということで、行政主体で進められてきた政策です。
今回のボールパーク構想に組み込まれる主な運動施設は、埼玉県の高校野球のメッカとして有名な埼玉県営大宮公園野球場(1934年~)、大宮アルティージャのホームスタジアムであるNACK5スタジアム大宮(さいたま市大宮公園サッカー場、1960年~)、大宮公園陸上競技場兼双輪場(1939年~)で、全て第一公園内に所在しています
現在は上記の競技施設を全て建替える案や、野球場とサッカー場それぞれをグレードアップもしくは修繕する案など複数候補があるようです。また、単に大型運動施設の修繕、新設だけではなく、カフェを併設したり、アーバンスポーツ(BMXやスケートボード、ボルタリング等)の設備を作ったり、スタジアムショップを作成するなども併せて検討されているようです。
また、構想作成段階から民間や専門家と協力してプランを作っており、全国他施設の事例を参考にする、建設や運営の方法で民間をかませた手法を列挙し、大宮公園にとって最も最適な方法を探るなど、かなり綿密な計画が練られているようです。
大宮公園の歴史
ここで、大宮公園が如何に大宮にとって由緒のある施設あり、各運動施設が歴史を持っているかを見ていきましょう。
明治に入り政府が領地の国有化と再配置を行う中で、氷川神社周辺を公園にすべく行政に掛け合い、130年以上も前の1885年(明治18年)4月に開園しました。その後、1898年に埼玉県で初めての県営公園となり、1921(大正10)年には、現在の久喜市生まれで日本の「公園の父」といわれている本多静六博士らによって「氷川公園改良計画」が施行され、現在の第一公園の原型となる大規模な公園整備が行われる中で、埼玉県営大宮公園野球場などが整備されました。その後、1980年(昭和55年)に第二公園、2001年(平成13年)に第三公園が整備されました。
野球場は当時から最も盛んだった野球の為に整備され、完成記念試合として日米野球が開催され、あのベーブ・ルースが試合したこともある、日本野球界でも大変由緒のある球場です。
サッカー場と競輪場は、1964年の東京オリンピックの試合会場としての利用を目的に整備され(競輪場はその後会場を移転)、その後撤去等の計画が経つこともあったものの、今日まで現存しています。
またサッカー場は日本初のサッカー専用スタジアムでもあります。
今後の課題
ここで現在考えうる問題や考慮すべき点を挙げていきたいと思います。
・サッカー場だけが市の所有権
野球場と競輪場は県営ですが、サッカー場だけが市営です。現在あるプランとして、サッカー場と野球場、もしくは競輪場、もしくはその全ての役割を全て併せ持つ施設を作ることも案としてあるようですが、まず所有権が違うという点、さらにサッカー場はネーミングライツを採用しているなどの点で、長期の折衝が見込まれるでしょう。
・近隣に同等スペックの野球場
第二公園に隣接する大和田公園にさいたま市営大和田公園野球場があり、現在メインで使われている高校野球には十分なスペックです。県営大宮公園野球場をグレードアップしたとしても、突然プロ野球チームの試合数が増えるわけではないので、果たしてそこまでグレードアップするのは何のためなのか、という意見があります。
・大宮アルディージャのホームコート
大宮アルディージャ 選手やサポーターにとっての聖地でもあるNACK5スタジアム大宮。実は過去に2度、このサッカー場を撤去する案がありました。一度は埼玉スタジアムの新スタジアム建設で、二度目は市町村合併に伴い運営権がさいたま市に移ったことで難を逃れています。プロサッカーチームのホームコートである以上、そのチームが優先してホームゲームを行うことを考えると、他の施設との共存は難しくなってくるでしょう。
・敷地面積が限定的
なぜ上記施設を併設させようという案があるかというと、『やりたいこと』に対して対象の敷地面積が圧倒的に少ないという理由があげられるでしょう。現存の公園部分の景観まで著しく変えることは、ベースである大宮公園グランドデザインから逸脱することになるので、『できること』の折り合いがつかなくなっている可能性があります。
終わりに
埼玉県出身の岩井千怜選手の双子の姉の明愛選手、さらには弟の光太選手もプロゴルファーとして活躍しており、3人とも埼玉のスポーツの名門でゴルフでも有名な、埼玉栄高校を卒業しています。そんなスポーツが盛んな埼玉県で新たな施設を拝める日は来るのでしょうか。
大型運動施設を作るには予算や使う選手、チームだけではなく、様々な要素が絡んできます。以降10年程度での計画完成を見越しており、これからどのように計画が進んでいくか注目していきたいですね。